メディカルツーリズム市場
長期滞在先、移住先として、マレーシアとタイは世界から多くの人々を惹き寄せており、実際に日本からも多くの退職者層、投資家層、経営者層などが移住している。
現在アジア圏ででメディカルツーリズムが有名なのは、タイ、マレーシア、シンガポール、インド、韓国とアジア圏がその地理的優位性も活かし、アジアはもちろん中東、欧米から多くの医療利用者を惹きつけている。そして台湾も高い医療技術を活かし、メディカルツーリズム市場の拡大に舵をとっている。
欧州では、ハンガリー 、ポーランドなども安価でありながら高い医療水準で西欧諸国からの医療需要があり、中東ではドバイ、中南米ではメキシコ、コロンビア、そして欧州在住者によると、イスラエルも医療水準が極めて高く、海外から多くの医療利用者を惹きつけているらしい。
写真 クアラルンプール 多民族、多言語の優位性及びムスリム最大人口を誇るインドネシアが近隣に位置し、医療需要が膨大に存在する。
マレー語とインドネシア語は言語が非常に類似しており、イスラム圏であるため、院内での食事などもそのニーズに対応可能であろう事もマレーシアのメディカルツーリズム市場の発展に大きく寄与していると思われる。
マレーシア、タイ共に長期滞在ビザを提供しており、一定条件を満たす人は長期滞在と可能となる。
富裕層の移住者の拡大は地域経済に多くの恩恵をもたらすが、資産要件を満たす長期滞在者を誘致するには医療制度の充実が不可欠である。
マレーシアとタイの医療制度は非常に高い評判を得ており、メディカルツーリズムとして海外からも多くの診療希望者を惹き寄せている。
両国ともアジアの中心及び欧州へのアクセスの良さの地理的優位性に加え、世界から評価の高いハブ空港を有するなど海外から高いメディカルツーリズムの需要を持っている。
タイは医療設備や技術水準の高さのみでなく、国民性とも言えるとホスピタリティ溢れる性格はタイでの医療を選択する外国人にとっての強い動機付けにも寄与しているし、マレーシアはその多言語能力のため、英語、中国語圏からの需要を惹きつける事が可能となっている事に加えて、2億を超える人口のインドネシアからの医療需要が存在する。
マレーシアにはアジア最大規模の民間医療機関であるIHHヘルスケアがあり、アジア諸国でその存在感を高めている。
現在日本の多くの病院でも、中国語、英語に加えて、ロシア語などを加えた多言語Webサイトの提供が多く見られる様になっており、今後メディカルツーリズム及びヘルスツーリズム市場のさらなる拡大が予想される。
日本の医療制度、医療の質の高さ、沖縄から北海道まで多様な気候と自然条件、成熟市場によりハイクオリティで安価な製品、世界最高峰の治安など日本はあらゆる条件において世界中から富裕層の移住を引き寄せる事が可能なポテンシャルを持っているとも言える。
東南アジア諸国は物価の安さも移住先として長く選ばれている要因の一つだが、現在は日本の物価が下落を続けており、近い将来生活コストが逆転する可能性もあり得る。
今後はデフレと円安、インバウンド市場の活況化を背景に、日本もアジア、欧米含め世界中の富裕層の移住や海外企業の進出を推進すべきである。
日本も医療ビザを以前から提供しており、諸条件を満たせば治療の為の同伴者を伴った長期滞在などが可能になる。
もちろん健康保険が適用になれば国の財政負担になるが、通常各国が提供している医療ビザはその国の健康保険制度は非適応となり、自由診療価格となる為、医院にとっても、誘致国にとっても大きな収益が期待される。
医療ビザ申請者にとっても、自身の選択で他国で医療を受ける事が出来る為、場合によっては自由診療であっても自国の医療より安価に又は高水準の医療が受けられる可能性が拡がるため、双方にとってメリットがある。
日本はデフレ、円安、五輪、周辺国の経済成長などインバウンドを後押しする状況が重なり、インバウンド市場は拡大しているが、今後必ず必要となるのは、観光客一人当たりの単価の上昇と各地域への分散化である。
観光は為替、シーズンほか外部要因に大きく左右される傾向が強いため、持続可能な市場成長のためには単価上昇、つまり中長期のロングステイおよび移住者の増加、富裕層の誘致が不可欠であり、メディカルツーリズムは正にこの中心となり得る市場である。
メディカルツーリズムでは海外からの富裕層対して、治療中の滞在先、高度な医療通訳他、治療に付随する関連市場にも経済効果が波及するため、コーディネーターの役割も重要となる。
また首都圏の病院よりも地方の方が自然環境などの面などでリゾート型の医療を提供出来るため、地方創生の観点からも海外からの医療利用者増加は地域経済への大きな波及効果が期待出来そうだ。
アジア ASEANの健康関連市場
写真 中国深セン 中国は日本同様少子高齢化が急速に進んでおり、高齢化に伴うヘルスケア市場の拡大が予想され、深センに集積するIT関連企業がヘルステック市場に多く参入しており、今後の動向が注目される。
ASEAN各国では経済成長による中間層、富裕層の増加に伴い健康関連市場が拡大することが予想される。
飽食の時代となり、生活習慣病、特に肥満問題はアジアの多くの国が直面する問題である。
実際アジアに訪問した人ならわかると思うが、各種飲料の糖分の量、食事の油分の量が日本人の感覚からすると異常に多く感じる事も多く、生活習慣病を急速に増加させる主要因になっていると感じる。
健康関連及び医療市場はサプリメント、リハビリテーション、予防医療、健康診断、医療機器他市場の裾野が広く、市場としては日系進出企業、そして現地の中間層、富裕層向けにビジネスを展開可能な機会が多く存在する。
少子高齢化の速度ではタイ、シンガポールが日本同様に進展しており、特にシンガポールは少子化、そしてタイも近い将来に確実に高齢化の波が押し寄せる。
ASEAN各国で差異はあれど、日本同様医療保険、年金制度、介護保険制度などの社会保険制度を整備している場合が多く、高額な医療向けに民間保健会社、民間資本病院も多く進出している。
特にバンコク市内は民間医院の進出が多く、法人経営が実施され、上場されている場合も多い。
オンラインでのヘルスケア市場
ヘルスケア市場ではオンライン診療も今後需要が大きく高まりそうだ。
病状によっては多様な情報、選択肢、適切な治療を選択する為の知識が重要となる場合がある。
情報量は言語人口と比例するのでオンライン診療により自国言語外の医師の意見を収集出来れば、より選択肢の幅が広がる。
また肉体的にも病院へ通院する事や診察までの待機時間は身体に大きな負荷となるが、事前予約により、決まった時間に室内から遠隔診療相談が可能であれば利点は多いだろう。
オンラインであれば、録画ツールを活用して後から医師のアドバイスを再検討も可能であり、翻訳ツールも急速に発展している為、既に言語間の障壁はかなり低くなっている。
有用なツールを活用し、より多くの情報へのアクセスが可能となる。
医療市場への市場原理の導入には賛否両論があるが、今後は安価な医療を求めて先進国から途上国へという地域の流れに関わらず、高い医療技術を持つ病院、又は医師の元に多くの需要が集まり、需要と希少性が高い医療費は大きく増大する反面、グローバル化により、技術差異が縮小し、一般的な治療においては低価格化が進む面もあるのかもしれない。
日本では例として美容師などの技術者は雇用契約ではなく、コミッションベースのフリーランスが多い様だが、海外では医師も同様のケースがあり、病院単位ではなく医師単位で診療予約が可能なシステムを提供しているサイトも多く登場している。
また私営病院は株式会社として病院運営を行なっている例も見られる。
各国で医療制度、医療法が異なる為、海外の医師オンライン診療予約サービスが日本でも同様に拡がるかどうかは分からないが、今後圧倒的な競争力を誇る巨大プラットフォーマーが医療市場に進出し、オンライン上で医師の診療予約、医師や病院の評価などが可能になり、病院選択の流れに影響を及ぼす事も考えられる。
ヘルステック市場には多くのスタートアップが続々参入している為、今後急速に市場の変化が起こりそうだ。
海外のヘルステック企業 参考例
多言語予約システムを医療産業へ活用
SuperSaaSは英語はもちろん、予約画面には中国語、韓国語、ロシア語など日本の医療観光需要が高い言語にも対応
医療機関で予約システムを導入する場合の利用想定例として
1.健康診断や人間ドック、遠隔診療相談などの通常診療と異なる自由診療の予約として
2.医院内の医療機器の管理など
歯科医院 モバイルでのスケジュールアクセス画面
下記ロシア語を選択した際の健康診断用のデモスケジュール
ロシア語選択時の予約入力画面
胃や大腸の内視鏡予約スケジュールとしての利用を想定
癌の早期発見などの為に胃カメラと大腸内視鏡検査の定期的検査の実施は強く推奨されている様だ。
両方の検査とも事前の予約が推奨されている場合がほとんどだが、医院によっては胃カメラであれば前日夜から食事を取っていなければ当日の予約受け付けも可能な場合もある様子。
以前は苦痛な検査として知られていた胃カメラと大腸内視鏡検の両検査だが、機器や技術水準の発達のおかげで随分楽になっている様であり、実際自身の検査体験からしてもほとんど苦痛は感じなく非常に容易と感じた。
特に胃カメラは前日夜からの食事抜きを除けば、実際の検査時間はほんの15分前後なので、予約済みであれば医院に到着して会計まで30分足らずの迅速な方式となっていて大変便利になっていた。
大腸内視鏡については午前開院と同時に着き、午前中は準備作業、午後から実際の検査開始、安静の流れとなる為、朝から夕方までの拘束はまのがれないが、検査自体は何の苦痛もなく大変楽な物であった。
大腸内視鏡検査は複数名同時に予約を受け付けている場合が多い様なので、予約スケジュールは定員制形式が適している。
通常電話のみ予約を受け付けている医院が多いが、開業時間後でも予約受け付けや予約者自身によるキャンセル、またキャンセルによりキャンセル待ちリストの予約者を自動で正規予約リストへ移動、その際自動メール送信で通知などなど一連の作業を全てシステムが代わりに行ってくれるため、医院としてはキャンセルの損失を埋め合わせる事が可能となり、更に開業時間後の予約を受け付ける事で収益性と予約者の利便性双方に貢献出来る事が予想される。
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