フィリピン 英会話市場の活気に湧くセブと今後の発展が有望なダバオ

フィリピン経済

フィリピンは約7千を超える島々で構成されている島国及び海洋国家であり、アメリカによる統治経験など日本と重なる点を持ち、距離的にも最も近いASEAN国家である。

また華人系、スペイン系を含む多民族国家でもある。

第二次世界大戦後には他アジアの国に先駆けて輸入代替型の工業化へ着手し始め、将来の経済成長がアジアの国家の中でも大きく期待されていた国であったが、他ASEAN諸国と比較すると経済は著しい経済成長を遂げる事なく現在に至っており、ベトナム、ミャンマーといった急速に成長を遂げている国家が大きく先を行っている感がある。

もちろんマニラのマカティやセブのITパークといったフィリピンを代表する財閥によって開発された地域は他先進国の主要都市と比較しても全く劣っている点はなく、先進的な都市環境が展開されている。

セブシティ中心部 ITパーク

区画整理された開発エリア内は非常に洗練されており、マニアのマカティ同様に先進国の主要都市と何ら変わりない都市利便性を実現している。行き届いたインフラ整備によってエリア内は徒歩移動も全く問題ない。


決定的に整備の遅れが目立つ社会インフラ

しかし、マニラのマカティやセブのITパークなどの開発エリアを一歩出ると、都市環境が全く異なる。

フィリピンに訪問した人ならおそらくほとんどの人が感じるであろうインフラの未整備状況、他ASEANの新興国と比較しても決定的に社会インフラの整備が遅れている。

例として、まず道路インフラの未整備などから発生する大渋滞及び排気ガスによる空気汚染、そして歩道の整備が未発達の為、歩く事が極めて困難であり、近距離であっても移動にタクシーなどを使用せざるを得ない。

結果として道路にタクシー、バイクタクシー、ジプニーなどの交通サービスが過剰発生し渋滞を深刻化させている。


フィリピンの交通 驚くほど安価な運賃で庶民の足となっているジープニー 

市内交通手段として車が主要であり、地元民はジプニーやバイクタクシー、観光客は一般タクシーやGrabの使い分けが主となる。

物価の安いフィリピンでも交通手段の格安さは大きな魅力の一つであり、タクシーでのdoor-to-door移動が主な交通手段となっても費用的には非常に安価である。

ジプニーやバイクタクシーを用途に応じて使い分ける事が出来れば安価なフィリピン市内移動を更に安く出来るが、安全面、運賃交渉面など上級者向けのため、一般観光客にとってGrabはマストアイテムとなっている。

セブやマニラでも非常に多くの台数が常に走っているが、感覚的にはダバオ市内のジープニーの数はセブを圧倒的に上回るほど凄まじい台数が走っている様に感じる。

当然にクラクションの数や排気ガスも台数につれ増加し、渋滞も深刻化するため、人々の健康面、渋滞による経済損失など多様な面からも交通インフラ整備が望まれる。

東南アジアではフィリピンのマニラ、インドネシアのジャカルタの交通渋滞は深刻であったが、ジャカルタは地下鉄建設を機に今後交通問題は改善に向かうだろう。

ベトナムのホーチミン、ハノイも同様に今後地下鉄などの大量輸送手段の登場を機に市内交通問題が改善されそうだ。

フィリピンのみでなく東南アジア都市部の渋滞の最大要因としてはやはり人口が多く、各地域だけでは雇用を吸収するだけの規模がなく、人々が職を求めて都市部に流入し、人口密度が都市中心部において過密化する。

参入しやすいドライバー職は雇用の受け皿となるが、バイクタクシー、ジプニー、一般タクシー、Grabに加え三輪自転車タクシーも地域により存在する結果、当然供給が過剰化し、大渋滞を引き起こす要因の一つになっている。

安全な歩道の確保他、交通インフラが整備されれば、夜間外出などがより簡易に安全になり、地域経済活動の時間が拡大する事が予想されるため、財政負担は大きくともインフラの整備は経済成長にとって不可欠である。


インフラ整備が遅れている要因

輸入代替型政策は関税で国内産業を保護しつつ、国内生産によって製造業の成長を促す目的があり、ほとんどの国が農業から、輸入代替型へ、そして輸出主導型への転換を図る。

ASEAN諸国もこうした過程を経て発展を遂げてきた。

但し、国内市場が十分な規模で無い場合、輸入代替型は製造に必要な原料の輸入の増加は貿易赤字へ繋がる。

輸出主導型への転換の前にフィリピン政府の対外債務は拡大した結果、IMFの支援を受ける事となった。

当然支援を受ける条件として緊縮財政が要求され、経済成長に必須であるインフラ投資へ振り分ける財源が十分に確保する事が出来なかった。

産業の高度化を実現する為には技術力のある外資を誘致し、技術移転を図る事が不可欠である。

しかし、製造業誘致には港湾や道路、空港などの物流、電力、上下水道、などのインフラ整備が不可欠であり、尚且つフィリピンは外資参入規制が強い面も影響し、経済成長のブースターとなる外資誘致が他ASEAN諸国と比較して不足していた感は否めない。

ASEANの新興国であるベトナム、ミャンマー、カンボジア 、ラオス中心部は日本、韓国、中国、欧米含め多様な海外資本が入り乱れ、結果として市内中心部の環境は非常に洗練され、観光客、資本、物が集積し、活況に湧いている光景からも外資誘致がどれだけ地域経済に大きなインパクトをもたらすかを理解出来る。

製造業、特に自動車産業はパーツなど関連業種の裾野が広く、経済波及効果及び雇用効果が非常に大きい。

自動車産業の集積によって圧倒的な経済成長を遂げたタイが良い例であり、また周辺諸国もタイのサプライチェーンに組み込まれる事によって成長した。

フィリピンは地理的に島々に囲まれ、更にASEANと離れているため、現在ASEANの製造業の集積地となっているタイおよび周辺での分業体制が進むメコン地域でのグローバルサプライチェーンに組み込まれる事が難しく、急速に拡大する自動車需要がありながら、国内で消費される自動車の製造は海外製造品が多く、産業の高度化が課題となっている。

多くの島々で構成されているフィリピンは、船舶を利用した港湾の整備が必要であり、フィリピン最大のマニラ港に関してはマニラの交通渋滞が港湾の物流の混雑にも影響をもたらしており、物流の低下を誘引している。

インフラ投資を実現するために、国債の発行を選択する場合もあるが、フィリピン政府の対外債務額の大きさから、返済金利も高くなる傾向があり、財政負担は大きくなる。

BOTやPPPなどの民間資金を活用したインフラ投資は既に実施されてきてはいるが、インフラの整備状況は現在の通り、まだまだ未発達である。


世界各国に跨がる海外労働者の国内送金がフィリピンの国内消費を支える

フィリピンは流暢な英語を武器とし、アメリカでは主に医療他高度産業、中東やアジアでは建築関連、福祉関連、サービス業関連業種など幅広い業種で世界各国の労働市場に貢献しており、海外で就業するフィリピン人が母国へ送金する外貨はフィリピンにとって重要な外貨獲得手段であり、国内消費を牽引する役割も担う。

労働者としての移住先が多くの国に跨がり、特定国家に依存しないため、外交など対外環境変化に対して強い特性が強みでもある。

また、流暢な英語力を武器としたBPO産業の集積も挙げられる。

BPO市場の大きなシェアをしめるコールセンター業務、カスタマーサポート業務は労働集約型であり、技術、経験の蓄積が難しく、ソフトウェア開発などの高付加価値産業と比較して賃金の上昇が起こりにくい難点が挙げられる。

フィリピン政府はIT産業の成長を後押ししており、その英語力と若年人口層の多さを活かし、英語圏のコールセンター、ヘルプデスクの集積地に加え、ソフトウェア開発他多様なIT産業での発展が期待される。

日本市場が異常に発展しているという点もあるが、フィリピン国内で販売されているパソコンの種類は非常に限定的であり、価格、品揃え共に日本で購入した方が圧倒的に安い。

今後フィリピンでの海外製パソコン製品の規制がもし仮に緩和されれば、多様な海外製品が参入し、地域住民はより安い価格で多様な製品を入手可能になり、よりIT産業が高度化、活性化されそうだ。


英会話事業が集積する大人気リゾート都市  セブ

アジアでも屈指の人気リゾート都市として高い注目と人気を集めるフィリピンのセブ島はフィリピン第二の都市であり、以前から日本、韓国資本を筆頭に多くの英会話学校が設立されており、英語留学の人気都市としてもその注目度を増している。

一年を通して暑く、季節は乾季と雨季に分けられるが、雨季でも1日中雨が降り続く様な事が無い点が特徴である。

その人気の高まりから、深夜発着便が多いにも関わらず出入国審査には長蛇の列が出来、特に韓国人観光客の多さが際立っている。

国際線空港の拡大工事も完了し、今後増加する空港需要に対応するインフラ整備が整えられており、夜間でもSIMカードや外貨両替所がオープンしているなど観光客に対して高い利便性を提供している点は素晴らしい。

沖縄とセブは主要産業が観光という点、近隣アジア諸国からの観光需要の急増、台風の往来頻度や温暖な気候など地理的に近い点からも類似点が多く見られるため、今後両都市はアジアにおけるリゾート地としての都市間競争において、両地域を比較し、学ぶ事が重要だと言える。

Mactan Cebu International Airport


セブにおける英会話産業の集積化

セブにおいて観光産業同様に、非常に重要な市場として英会話学校市場が挙げられる。

流暢な英語と安価な人件費、ホスピタリティ溢れる性格を活かし、日本、韓国を含む多くの企業が現地で英会話学校を設立し、宿舎を含めた英語合宿、留学コンサル含む多様な英会話関連事業が提供されている。

セブ島近隣の日本、台湾、韓国、中国、台湾でも以前から英会話需要が急速に高まっており、直行便でわずか2、3時間ほどで行き来可能な距離と非常に安い物価、リゾート地としての豊かな自然環境は英語学習者にとって人気になるのは当然であろう。

また、ベトナム、タイ、インドネシアなども今後英語需要がより高まることが予想され、セブ島の英語留学は顧客獲得地域がより広範囲になる高いポテンシャルを持っている。

ASEAN諸国が急激な経済成長を遂げている現在、フィジーも英語留学では人気であるが、距離的にもASEAN諸国へより近いセブ島における英会話スクール事業の潜在市場は極めて大きいと言える。

学校間の競争により、留学希望者にとっては選択肢の幅が広がり、質の高い授業を受ける機会が増えるため、同市場は更に発展しそうだ。

地域経済にとっても、観光産業に加え、英会話スクール市場が成長しているため、市への税収の増加、地域雇用率の上昇、スクール事業や宿舎用の地域不動産活用、宿舎の清掃、食事の提供他、スクール市場が地域経済にもたらす経済波及効果は非常に大きく、現地政府にとっては積極的に参入を誘致したいところだろう。

大量の水と電気を必要とする製造業の誘致と比較し、スクール事業は既存資源を活用するため、電力供給が逼迫しているフィリピンにとっては大規模なインフラ投資などが必要ない英会話事業は地域にとって非常に重要となる。

アヤラモール 

フィリピンの財閥は他東南アジアで見られる華人、華僑が中心の財閥に加え、スペイン統治時代の名残からアヤラモール、マカティの都市開発などおなじみのアヤラグループなどのスペイン系財閥が国内経済において圧倒的な経済シェアを誇る。

スペインによるフィリピン統治時代のプランテーション経営から始まり、不動産開発そしてグループの多角化を実施してきた結果、フィリピンにおいて絶大なる経済力を有する。

フィリピンの特徴として地元民、観光客共に多くの人で賑わう洗練されたショッピングモールが挙げられる。マニラ、セブ、ダバオなど主要都市には各エリア毎に多様なモールが点在しているため、日常品から高級ブランド品まで各ニーズに合わせてモール巡りが可能である。

日本のショッピングモールと比べても店舗数の多さなど一切遜色がなく、むしろフィリピンのモールの方が滞在していて面白い場合も多いのではと感じる。

SMモール フィリピンを代表する財閥の一つであるSMグループが提供する巨大モール


ダバオ

ダバオ国際空港 

コンパクトながら使い勝手が非常に良く、店舗数も充分

市内とを結ぶ交通手段はタクシーのみ、距離にして10km弱、通常時間にして30分前後だが、時間帯により渋滞が凄まじいので注意が必要だ。

ドライバーはダバオの噂通り、きっちりメーターで移動してくれる為明朗会計で安心だ。

ダバオは、現フィリピン大統領が20年間市長を務めた都市として非常に有名なフィリピン第3の都市であり、フィリピン随一の治安を誇る都市としても非常に有名である。

また、戦前沖縄から多数の移民がダバオに移り住んでいることも知られている。

実際、ダバオを訪問した感想としてはタクシーは確実にメーターを使用するし、市内中心部の治安も他フィリピン主要都市と比較しても最も良いと感じる。

ダバオ市内中心部は徒歩移動可能な距離に多様な店舗が集中しており、交通利便性が非常に高く、セブと同様に、ダバオ市内には複数のショッピングモールがあり、入手可能な製品もセブのショッピングモールと比較して何ら遜色はない。

何よりも、ダバオの人々の性格が非常に良く、観光客が非常に多いセブと比べて、ほぼ観光客を見る機会は皆無に近い事も関連しているのか、非常に素朴で親切な人が多かった印象が強い。

英語の通用度はセブと大きな違いが見られ、セブのタクシー運転手はほとんど問題なく英語を使用可能であるが、ダバオのタクシーではセブと同様の英語のコミュニケーションは難しかったケースが多くあった。

ダバオ、セブ共に日本車のシェアは凄まじく高く、タクシーはほぼトヨタであり、街には日産、本田他日本の主要カーメーカーの車で溢れており、韓国のヒュンダイも多く見かける。

手軽にアクセス可能なビーチリゾートも有し、トライアスロンレースのIRONMANの会場にもなっているダバオには、市内中心部は多様なスポーツクラブが存在し、月会費にして日本円にして大体平均5000円程度と、現地収入から比較すれば決して安くない金額であるが、それでも大勢の会員で賑わっていることからも、経済が成長し中間層が増加している事が伺える。

中間層はこうして自身の健康に対して敏感に対処が可能になっているが、街中至る所に溢れるファーストフード店の多さ、揚げ物、甘い食品の占める割合の多さなど、今後フィリピンにおいて肥満を含め健康上の問題がより表面化しそうだ。

長期滞在者にとっては地域の医療インフラは非常に重要

ダバオの市立病院であるDavao Doctors Hospitalはホテルが多く集中する市内中心部に位置

治安においても街中至る所に警察がおり、治安向上に貢献している。

また条例でタバコのポイ捨てなどが厳しく制限されているため、市内でタバコのポイ捨てや歩きタバコもほぼ皆無な点は素晴らしい。

フィリピンの私立病院では医師と病院は日本の様に雇用関係ではなく、フリーランスとしての日本で言う業務委託形式が採用されている場合も多く、検査時などはその検査内容によって各医療部門毎に会計を完結する必要があるなど、日本の医療システムとは大きな相違が見られる。

多くの医院が医院のウェブサイト上で患者に対してオンライン予約を提供しているが、一般的に普通の問い合わせフォームが多く、診療予約完了までに複数回のメールでのやり取りが必要になる事が予想され、決して患者にも医院側にも利便性が高いとは言えない。

医師を指定した予約が必要であれば、医師毎に予約スケジュールを作成、管理するなど、担当医と患者双方の診療予約の管理などでオンライン予約システムが活用出来そうだ。

タガログ語などの母国語に加えて高い英語力を持つ人口が多く、管理画面にて英語の選択が可能なSuperSaaS予約システムの導入は全く難なく実施可能だろう。

海も近くリゾート地としての魅力も併せ持つダバオ

現在シンガポールほか一部の空港を除いて国際線の直行便数が少ないダバオにはセブ空港やマニラ空港を経由する必要がある為、その点がネックであるが、今後もし直行便が多く就航されれば間違いなく、セブ同様に高い経済成長を遂げるポテンシャルを持っている素晴らしい都市である。

Davao Investment Conference 2019も先日開催され、国際社会からの注目度も高まっているダバオの更なる急速な発展が期待される。

市内中心部に位置する大規模なインターネットカフェ 

e-Sports市場はフィリピンでも非常に人気が高く、市内にeSportsに特化したサイバーカフェが複数存在し大会開催などが活発に行われている。


今後の発展が期待されるフィリピン

アジア圏で次に中進国入りする国として急速な経済成長を遂げているベトナム、ミャンマーが挙げられている中、インドネシア、フィリピンは膨大な人口から成る巨大消費市場としても世界から注目を集めている。

上記に挙げた国々だけで人口5億近いという巨大な経済圏を誇っており、その市場が持つポテンシャルは凄まじいものがある。

フィリピンは社会インフラの未整備や貧富の格差の大きさなど問題も多いが、裏を返せばそれだけ莫大なポテンシャルを秘めていると言え、更にグローバル化の時代において英語力は絶大な武器となる。

堪能な英語と若年人口の多さを活かし、今後は世界のBPO拠点として、ASEANの英語留学の集積地として、そして介護人材市場での活躍などが期待される。

上記でも述べたが特にダバオは国際線の就航数が増加すれば、今後大きく注目を集める非常に高いポテンシャルを大きく持っている。

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