世界のスマートシティとアジアのエネルギー市場

進む脱酸素化とスマートシティ構想

近年アジアでは猛烈なモータリゼーションの進展などを含めた急速な経済成長に伴う空気汚染などの環境問題への関心が高まっており、またエネルギーを中東に大きく依存するリスクヘッジの観点からも再生可能エネルギーの発展が進んでいる。

脱酸素化で世界の先端を行く欧州では特に環境規制が高まっており、高い技術と長年の経験を有する欧州企業は積極的にアジアのエネルギー市場へ参画している。

また、北海油田収入を元にしたノルウェーの政府系ファンドは積極的にポートフォリオ内における再生可能エネルギー分野の増加、そしてサウジアラビアのSaudi Aramcoの上場を機とした非石油依存型経済の構築目標、二酸化炭素排出0構想で話題を呼ぶアブダビ のマスダールシティなど、世界を代表する産油国が石油以外の分野へ多角化、そしてエクソンモービル、ロイヤルダッチシェル、BP、トタル、シェブロン、などの石油メジャーの統廃合を通して誕生した石油スーパーメジャーも総合エネルギー企業へと転換などエネルギー市場は劇的に変化している。

OPECに加え、各国の新セブンシスターズとも呼ばれる国営石油企業、サウジのSaudi Aramco、マレーシアのPetronas、ブラジルのPetrobras、中国のCNPC、イランのNIOC,そしてベネズエラのPDVSAなどの今後も動向も注目される。

もちろんロシアのガスプロム、アメリカのシェール開発など世界のエネルギー市場の鍵を握る存在からも目が離せない。

日本でも電力小売市場の自由化、発電設備の小型化、低価格化などが急速に進展していることから、今後は発電事業がより多様化、分散化される事も予想される。

特に再生可能エネルギーは蓄電池の劇的な開発進展がない限り、基本的には地産地消しが大前提となるため、まだまだ化石燃料に依存せざるを得ない状況は当分変化しないと思われるため、各地域の特性を活かしたエネルギー開発に加えて、資源輸入の多様化、そしてエネルギー消費の効率化など多角的に実施する必要がある。


世界各国でスマートシティ構想が拡大する中、シンガポールはその極めて効率的な都市管理システムと経験を活かし、都市管理システムをそのままパッケージとして他国へ輸出する事が可能となっている。

都市管理に関わるコンサルや各設備のメンテナンス他、長期的にに高い利益を創出する注目度の高いインフラ産業の一つでもある。

写真 台湾 高雄

日本同様地震リスクが存在する台湾は脱原発を以前から掲げており、再生可能エネルギー、特に風力及び太陽光発電を国策として進展させており、日本、欧米企業各社がプロジェクトに参画

写真 LRTの運行を開始した台湾 高雄

現在欧州を筆頭に各国の都市中心部においてLRTの建設、そして新興国では地下鉄の建設が相次いで実施されている。

台湾の高速鉄道も当初は欧州企業の鉄道を導入予定であったが、台風、地震など自然災害条件が日本と類似しているため、日本の700系シリーズをベース車両と導入し、日本企業が車両製造に携わった経緯がある。


LRTと地下鉄

公共交通機関が極めて高度に発達している香港


脱石油資源の傾向が加速する昨今、市内中心部の激烈な交通渋滞や空気汚染の解消策及び大量輸送手段として鉄道の需要が増している。

日本も路線バスが高度成長期時代は多くの都市で見られたが、モータリゼーションの流れと共に、定時ダイヤでの運行が困難になるなど、多数の理由から沿線が続々廃止され、旧路線で使用されていた車両は地方の在来線に移行し、路線バスの規模は縮小を辿った。

欧州地域も日本に先駆けて路線バスやLRTの導入が盛んであったが、日本と同様モータリゼーションの普及と共に路線数が減った経緯を持つ。ベトナムも実は同様であり、路線電車を廃止した経緯を持つ。

しかし、日本、欧州共に少子高齢化により、都心回帰の動きが強まり、世界的に都市中心部においてLRTなどを利用したウォーカブルシティーが注目を集め、中欧で再度LRTの価値が見直されて以降、欧州全域に加え、日本でも富山、広島などでLRTが運行され、現在では欧米、アジア、オセアニア、南米他世界各地でLRTの建設ラッシュとなっている。

広島市に導入されたLRT車両は、シーメンスが製造、サウジアラビア王国はスペイン製、モロッコはフランスのTGVなどが挙げられる。

LRT導入の主要目的として歩行者の交通利便性向上が挙げられ、そのためには乗り降りの際の段差の軽減などバリアフリー化が進められている。

LRT車両の下には充電器他運行に必要な機材が搭載されているため、屋根他別の場所へ機器を搭載するなど工夫がされている。

クアラルンプールやマニラのLRTは高架線を利用した路線であるが車両はLRTである。

LRTは今後都市環境の向上に大きく寄与する可能性が高く、米国のポートランドは都市環境の高さでは常に名前が挙がる有名都市となっており、主要交通はLRTである。


スマートシティ及び鉄道建設で世界でシェアを拡大する中国

写真 広州 深センと並びスマートシティとしても注目を集める広州

市内は電動バイクを含め多様な交通手段が提供されており、交通量と比較して非常に静かな環境となっており、その都市環境技術の高さに驚く


世界の高速鉄道市場ではやはり欧州企業が高い市場シェアを誇り、例としてフランスのALSTORM、ドイツのSIMENS、に加えイタリアやスペインも高い技術力を誇る。

韓国もExpress TrainはフランスのTGVをベースとし、中国も高速鉄道導入当時はフランスのTGV、ドイツのICEなどの技術を取り入れCRHシリーズの開発経て、現在ではアジアを含め、世界多数地域で高速鉄道建設や車両を提供し、コロンビアのボゴタでもMETRO建設を中国港湾工程有限责任公司が担う予定となっている。

またヨーロッパの鉄道市場では、フランスやドイツなどの主要メーカーが絶対的な市場シェアを誇る中、中国はハンガリーでの車両納入など欧州でもその市場シェアを拡大している。


フランスのALSTOM社は、フランス国鉄と共に共同でTGVを開発し、鉄道メーカーCEFを買収し、鉄道市場に参入し、現在では欧州全域に加え、アジア多数地域などでTGVベースの鉄道が導入されている。欧州の鉄道規格は統一されている場合が多く、国を跨った鉄道の拡張が可能な環境となっている。

カナダのボンバルディアは、スキーカーメーカーとして設立され、1970年にカナダの鉄道企業を買収後、鉄道市場へ参入し、その後、ヨーロッパの鉄道会社も積極的に買収して事業範囲を拡大し、現在では鉄道と宇宙事業で絶大な市場シェアを誇る。


再生可能エネルギー市場

エネルギー供給の多様化は国家安全保障の観点からだけでなく、災害対策としても非常に重要性を増しており、電力小売自由化などの制作変更により供給事業者の多様化が予想されている。

多様な各再生可能エネルギーが完成品メーカーを主軸として、多様なな製造サプライチェーンを形成しており、自動車産業のような多くの企業が関連している。

膨大なサプライチェーンにより構成されており、コンサルテーションや導入前の環境調査など含めれば、関連企業数、部品数が膨大となり、経済波及効果が非常に高い。

また精密な部品が要求されるため、海外メーカーへの部品提供が占める割合も高い。

完成品メーカーとしては日本の重工業を代表する企業がやはり主要であり、国内のみならず海外でも多くの生産工場を設置している。

今後は機器の発達により小規模分散型がより普及し、蓄電池の進歩と合わせて、各家庭単位でもエネルギー生産が可能となり得るだろう。

新規事業の参入者を増やすためには、固定買取制度などを実施し、参入障壁を大幅に下げる事が有効視されており、多様な国で各再生可能エネルギー事業者へ優遇措置が設定されている。

固定価格買取制度の停止と共に破綻する業者が出るのも事実であるが、こうした現象も制度導入前から当然盛り込み済みの結果である事も考慮すべきでもある。

風力や地熱など設置前に調査他莫大な初期投資が必要な手法と比較し、太陽光発電は設置の障壁が比較的低く、そうした面からも多くの業者が市場参入し、技術的にも急速に進化、低価格化が進んでいる発電方法の一つである。

特に中国製造企業の躍進はめざましく、世界シェアを着実に伸ばしている。

今後都市部において、建築物の屋上を利用した太陽光発電がより普及し、発電事業者とビルオーナーとの仲介やソーラー機器のレンタル他新規ビジネスの活性化も予想される。

写真 沖縄の太陽光発電

1970年代のオイルショックを契機とし、日本含め多くの国が自国でのエネルギーの生産の開発をより重視する様になり、現在では技術革新の流れも伴い、各国が再生可能エネルギーの開発を急拡大させており、エネルギー関連企業は国境を超え各地で大型プロジェクトを受注、実施がされており、今後エネルギー分野で競争力を持つ企業は世界的にシェアを拡大できる可能性が高い。

再生可能エネルギーへの意識の高まりにつれ、Appleの様に一般エンドユーザーが極めて重要な企業にとって、サプライチェーン内企業に対して一定のグリーンエネルギーの使用を求める動きは他巨大多国籍企業へも拡散されるだろう。

太陽光設備の進化、小型風力発電の登場、スマートメーターシステム他、発電設備が小型化、進化しており、発電方法も多様化している。

今後は電力のサプライヤーとして個人や家庭からも参入者が出てくる可能性があり得る。

日本は人口の減少により電力消費量は減少する可能性がある一方、電気自動車など従来とは異なる電力需要が発生し、既存の電力市場は変革の時期を迎えていると言える。


水力発電

山間部の多い日本の地理や雨量が多い気候条件などはダムによる水の高低差の位置エネルギーから発電する水力発電が適しており、日本全国の河川には膨大なダムが建設されている。

ダム建設は周辺集落に対する補償や建設場所がどうしても消費地である都市部から離れるため、送電網のコストがかかり、森林内へ重機など建設機械を導入するための道路造りなども必要となり、そうした面で地域生態系への影響など考慮すべき点も多く存在するが、火力発電などの様に燃料を必要としないメリットがあり、尚且つ非常に頑丈で維持費用も発電用のダムであれば設備機器の更新が必要となるがメンテナンスを含めたランニングコストが比較的小規模となりえる。

軟弱地盤の上に建つ一般的なビルは基礎杭を深く打ち付ける必要があることと比較し、ダムは地盤表面の石を取り除き、硬い新しい地盤表面に一体化する様に建設されるため、耐震力も強い。

地震大国である日本において、全国各地にダムが存在することからもその丈夫さがうかがえる。また、一般建築物と比較し、ダムの場合はビルなどの構造に利用される鉄筋コンクリートの鉄筋を含まないため、鉄筋が錆びて劣化する心配がなく、コンクリートの厚さ、量も桁違いに多いことも構造を頑丈にしている主要因である。

再生可能エネルギーの中でも水力発電は電力の調整が可能というメリットが存在するため、大都市の電力需要を水力発電のみで賄うことは難しいかもしれないが、他の発電とミックスし、補完し合う方法としての活用も考えられる。

水力発電量が豊富な国としてはカナダ、元々水源が多く水力発電が主流の国である。

欧州地域でもやはり水力発電量が多く、アジアでは中国が風力、太陽光の圧倒的シェアについで水力でも高い発電量を誇っている。

またラオスはアジアのバッテリーと呼ばれ、メコン川を利用した豊富な水力発電量をほこり、ベトナムも水力発電量が多い。

日本は海で囲まれ、離島も多く、波の力を利用した波力発電も今後重要性を増すだろう。

特に離島の主要電源はディーゼル発電であり、燃料は海外に頼っているため、価格変動のリスクも高く、今後波力発電の開発がより進みそうだ。

また、再生可能エネルギー源の中で、水力発電の発電効率は高く、今後発電効率の上昇が期待される。


風力発電

日本の風力発電は北海道と東北地方に多く集中しており、洋上風力発電としては九州地帯もポテンシャルを持っている。

これらの地域の自治体の中には、電力自給率が100%を超えて都市もあり、特に風力が大きなシェアを持っている。

風力発電プロジェクトは膨大なパーツから構成される機体製造ほか、多様な産業が関わるため、経済波及効果も非常に高くなる。ただし、太陽光と比較し駆動部分が多いため、メンテナンス、特に洋上発電は安定した発電量と引き換えに初期投資とメンテナンス費用が巨額となり得る。

欧州は陸続きの地形もあり、送電網は国境間を跨がり、適地で生産された電力が国境を超えて需要地へ送電されることも可能となっている。

気象情報などを正確なデータを迅速に収集し需給に合わせて電力の受給量の調整が可能となっている。

ノルウェーの政府系ファンドも、エネルギー分野への投資へ積極的だ。収益性はもちろんの事、環境への適応性などその論理感も問われるため、今後も再生可能エネルギー分野へ資金が流入することが予想できる。


水資源 水道管理技術

淡水資源の確保は急速な経済成長及び工業化が進展するアジアの多くの地域が直面する問題となるだろう。

特にタイ、ベトナムをはじめ、河川が主要都市中心部に多く存在する地域では河川の環境保護、水質改善は周辺一体への不動産、商業価値の向上にも繋がるため、水質浄化プロジェクト、淡水化技術は今後より多くの資本が流入することが予想される。

世界各地で今後水不足が深刻化することが予想される中、日本の各自治体や民間企業が積極的に海外展開をしている。

日本の総合商社は現地企業や海外水メジャーと合同で多様な水事業を行っており、また豊富な上下水道管理運営知識と経験を有する日本の各自治体及び水道設備で高い技術力を誇る民間企業の海外進出は今後より活発化するだろう。

特に高度経済成長時代、産業の高度化に伴い、工場の排水処理など環境問題に取り組んできた経験と技術力はアジアの多くの地域で必要とされており、双方にとってwin-winの関係性の構築が期待できる。

水不足が懸念されている地域として中東、イスラエル、シンガポール、中国、オーストラリアなどがよく挙げられる地域であり、今後海水淡水化技術の需要が大きく伸びる事が予想され、各地域では積極的に海外企業を誘致し、技術開発に勤めている。

主要な淡水化技術として蒸発方と逆浸透膜方法が挙げられ、今後は高い技術力を要する膜製造技術の開発競争が更に激化するだろう。

上下水道の民間委託が早い段階から進んでいた欧州地域では民間企業の水市場への参入が盛んであり、水メジャーはヨーロッパはもちろん、中東、アジアを含め勢力を拡大している。

フランスのVeolia, SUEZ、スペインのAqualiaに加え、米国のGEやドイツのSIMENSなどのコングロマリットも水市場へ参入している。


地熱エネルギー

日本は火山が多く、その地形は地熱エネルギーに適し、再生可能エネルギーの一つとして地熱発電のポテンシャルも期待されている。

特に天候など外部要因に左右されず安定して発電可能な優れた点があり、ベースロードになり得る発電としても有望視されている。

普及の壁として、調査開始から、建設、発電まで長期を要する事であり、掘削費用や調査費用は莫大となり、資金面がまず大きな開発リスクとなる。

更に多くの地熱発電に適した場所が国立公園内のため、制約が多い点、更に温泉など同地域への影響の懸念などをクリアせねばならない。

日本以外ではアイスランド、ニュージーランド、インドネシア、フィリピンなども多くの火山を有しており、地熱発電が盛んなため、日本企業は総合商社をはじめ、海外において地熱プラントの建設受注やタービンの提供などで海外市場へ進出している。

特に地下の熱水には多くの不純物が含まれているので、様々な物質に対する耐久力の高いタービン製造が求められている。


天然ガス

天然ガスは火力発電の主要な燃料として急速に世界中特にアジアを中心にその需要が増加しており、特に日本では震災後の火力発電への比重増加が急務となったため、石炭と比較し、より環境に優しい天然ガスへの依存が高まっている。

しかし、世界で最も高額とも比喩される石油連動、高価格契約で輸入されており、日本の経済負担になっている。日本の天然ガスの輸入価格が高額な理由で、石油の代替燃料として輸入が開始されていることにも起因すし、日本同様韓国、台湾も天然ガス輸入大国である。

アジアでの供給国としてブルネイ、インドネシア、マレーシア、ミャンマーなどが挙げられるが、各国が自国でもエネルギー需要が高まっているため、今後は市場がどう変化するのか未知数の部分も多い。

天然ガスの液化技術は、米国で開発され、1970年代の石油危機を機に、国策として総合商社の仲介を通じて、日本でも天然ガスの輸入を開始した。

その後、中国など他国でも、天然ガス需要が高まり火力発電燃料として世界の主力エネルギー燃料の一つになっている。

特に日本のような海に囲まれた国の資源輸入は重要な安全保障問題の一つであり、欧州の様に陸続きでバイプライン接続が不可能な地理では、エネルギー問題は極めて重要となる。

天然ガス油田の開発、液化プラントの建設、気化プラント建設、特別な輸送船は、莫大な期間や費用が必要になることもあり、契約期間は長期が一般的だ。

アジア、米国以外の天然ガスの供給地として中東やオーストラリア、ロシアなどがあげられるが、中でもオーストラリアや中東は水不足も深刻な地域であり、海水の淡水化には莫大な電力を利用するので、自国での電力需要も増加しており、特定の地域への資源輸入依存の危険性は高い。


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