インドネシア経済
圧倒的な経済成長速度で世界から注目を集めているASEANにおいて、最大の人口、国内消費市場を持つのがインドネシアである。
また、多民族及び膨大な島々から構成される島嶼国家でもある。
労働生産人口の増加は今後も上昇が予測されており、家電などの耐久消費財や自動車やバイクの購入など潜在消費需要の多さに加えて、昨今就航が開始されたMRTを含め、膨大インフラ建設需要を持っている。
インドネシアは2億以上の人口を誇る世界屈指の人口大国であり、若年層が多く、更に天然ガス、石炭、鉱物資源に加え世界第４位のコーヒー豆生産量、そして天然ゴムの生産でも世界トップクラス及び豊富な水産資源を持つため、今後の経済成長が最も期待されている国の一つである。
日本は天然ガス、石炭、石油など燃料資源輸入量はアジアでも最大規模であるが、その多くをオーストラリア、マレーシア、ブルネイ、そしてインドネシアから輸入しており、日本はインドネシアへの最大のODA提供国でもある。
インドネシアはエネルギー面では日本同様、火山地帯が多く地熱発電の開発での日本企業との連携が今後増えることも予想される。
原油、天然ガス、石炭の産出国であるが、急速に増加する国内のエネルギー需要に対応するためには石油精製技術と設備、天然ガス輸送のパイプライン、二酸化炭素排出を抑える火力発電技術などの向上、設置が不可欠であり、膨大なインフラ建設を受注するため、日本、中国、韓国や欧米先進国の間で受注競争が繰り広げられている。
経済問題として対外債務の多さによる慢性的な財政赤字が挙げられ、交通インフラなどが未整備な地域が多く、今後のインフラ整備にも多額のコスト負担が必要となる。
人口の多さは経済成長において非常に大きな推進力となる事は確かであるが、一方で人口が多い分国内で雇用機会を創出する事が難しく、貧富の差や貧困層が拡大しやすい一面も併せ持つ。フィリピン同様にインドネシアも今後の経済成長においてはやはり人口抑制策を考慮すべきであると考えられる。
また、日本では以前から高齢化社会による介護市場人材に対する需要が急速に高まっており、インドネシア人介護者に対して、日本のみならずアジアの先進国間で誘致合戦が起こりそうだ、特に日本同様高齢化に直面している台湾ではインドネシア人介護士が街中で非常に多く見かける。
整備が期待される交通インフラ
東南アジア諸国では高温多湿の気候に加えて、スコールなどの雨量も多く、更に下水道及び歩道インフラ整備が未熟なため、雨天時には容易に冠水する事が多く、またインドネシア含め多くの国が燃料補助金を設定し、ガソリン価格を抑えているが、こうした点も車、バイクなどの交通手段の増加、深刻な空気汚染につながっている面もある。
燃料補助金は原油のマーケット価格が上昇すれば当然輸入コスト増となり、政府の負担が大きくなる、しかし燃料費の引き上げは国民からの反発も大きく実行は容易ではない。
フィリピン、インドネシアなどが顕著であるが、歩道、信号などの交通インフラが未成熟なため、日本では確実に徒歩で移動する距離でもタクシーなどの交通手段を選択せざるを得ない状況が極めて多く、渋滞悪化の原因となる。
大量輸送手段
インドネシアの首都ジャカルタはマニラ同様渋滞が深刻化していたが、地下鉄開通で大きく交通の便が改善され渋滞緩和に繋がることが期待される。
ジャカルタは空港から市内間の移動が以前はタクシーのみで、渋滞にはまれば優に一時間以上掛かる場合もある為、運賃、時間のコスト負担が悩みの種であった。
地下鉄やLRTは高いエネルギー効率性の他に、電気を燃料とするため、エネルギーの生成方法、調達方法も多様である点が挙げられる。
鉄道などの大量輸送手段のインフラ整備には地域の特性を考慮し、耐震技術など極めて高い建築技術が必要とされ、車両、路線のメンテナンスにも高精度の部品、高い検査、メンテナンス技術も要求される。
欧米諸国では建設用地取得費用も、路線運行の人件費も巨額になるため、高めの運賃でも費用回収は難しい、東南アジア諸国などでは一般庶民が利用しやすい様に低価格の運賃提供が必要となる。
昨今では鉄道路線のインフラ整備は政府、運行は一般企業が担当するなど、経営の分離も見られる。
また地下鉄の建設にかかる莫大な費用の回収は建設後の運賃収入だけで賄うのは難しい面があり、政府の補助金活用、及び建設にはPFI方式が採用されるなど政府の債務が巨額になるのを防ぐ方式が採用されている。
更に現在ジャカルタ首都移転の動きも出ている為、今後大きく社会構造が変更しそうである。
ハラール認証
マレーシア、インドネシアへのビザ緩和により、今後同国からの訪日観光客が大幅に増加することが見込まれる。
両国併せて人口3億近く、更に豊富な資源産出国でもあるため、今後経済成長が見込まれる大きなポテンシャルを秘めた地域として世界中から注目されている。
マレーシアは成長戦略としてハラール認証制度を確立しており、ハラール製品の供給のハブとして、より存在感を増すことが見込まれる。
インドネシアは人口の大部分をムスリムが占めており、更に小国ながら資源大国の超富裕国であるブルネイも同様である。
シンガポールもムスリムが多く、更にマレーシア、インドネシア、ブルネイなどから近い地理的条件もあり、ムスリム向け市場が発達。
世界中で多大な人口を誇るムスリムに対するハラール市場は今後も需要が拡大することが見込まれ、日本のインバウンド産業、海外進出企業の多くがハラール制度の認証を得ており、マレーシア進出企業は同地区を供給拠点として中東他海外展開が行われている。
ハラール認証には製品の原材料においてもハラールへの適応が必要なため、企業にとっての負担は当然増えるが、ハラール向けの市場規模の大きさから、認証の取得を検討する企業が増加するだろう。
日本の中小規模の飲食店でハラールに適応した飲食の提供は中々難しいかもしれないが、その分他店との差別化が可能になり、また供給の少なさから高価格での提供も可能となりえる。
徐々にハラール対応店舗が日本国内で増加すれば、ハラール食品への対応がより効率化され、供給が増え、より多くの訪日ムスリム観光客への提供が可能となりそうだ。
またインバウンド市場のみならずハラール市場は世界で巨大な市場規模を有するため、アウトバウンドと両面で新たな市場開拓が可能かもしれない。
介護市場
少子高齢化が急速に進むアジアの先進国にとって、外国人介護士需要は激増する事が見込まれ、人口の多いASEAN諸国の介護市場はこうした需要に合わせて急拡大する事が予想されまる。
良い人材を育て、確保する為にもASEAN地域へ、多くの海外資本の介護事業の進出が見込まれる。
その中でも圧倒的人口規模を誇るインドネシアとフィリピンは先進国の介護市場の拡大に併せてより高い経済成長が到来するだろう。
アジアの先進国でも高齢化が同時に進む予想だが、日本は最も早く高齢化に直面している知識と技術力が累積されており、今後介護市場における多様な分野において日本の存在感は増す可能性がある。
介護市場の最先端地域として多くの国から日本の介護技術の導入に対する需要が高まりそうだ。
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